『ブラックパンサー』は、アフリカの架空の国ワカンダを舞台にしたスーパーヒーロー映画です。
物語は、父王の死を受けて新たに王位を継いだティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)が、国を守る「ブラックパンサー」としての責務を背負いながら、王位を脅かす宿敵エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)と対峙する姿を描きます。
感想
『ブラックパンサー』を観終えたとき、まず強く残ったのはワカンダという国の鮮烈な世界観だった。冒頭から映し出される鮮やかな色彩の衣装や、アフリカ文化をベースにした建築や音楽は、単なる背景ではなく物語そのものを支える大きな力になっていて世界観を理解するのにすごい良かった。特にティ・チャラが妹のシュリの研究所を訪れる場面で、彼女が最新のヴィブラニウム技術を軽妙に紹介するやりとりは、兄妹の温かい関係性とワカンダの未来的な側面を同時に見せてくれる印象的なシーンだった。
一方で、物語の核にあるのはティ・チャラとキルモンガーの対立だ。オークランドのアパートで父を失い、アメリカで孤独に育ったキルモンガーが、王位継承の儀式でティ・チャラを打ち倒す場面は衝撃的だった。彼の「世界中の抑圧された人々にワカンダの力を解放する」という主張は、単なる悪役の野望ではなく、現実の歴史や差別の痛みを背負った叫びに聞こえた。だからこそ、ティ・チャラとの最終決戦で彼が「奴隷として生きるよりは死を選ぶ」と夕日に沈むワカンダの大地で語るラストは、単なる勝敗を超えた重みを持って胸に迫った。
ただし、全てが完璧だったわけではない。例えば、地下鉄の線路上で繰り広げられるティ・チャラとキルモンガーの最終バトルは、CGのクオリティが低く、まるで初期のゲーム映像のように見えてしまい、せっかくのクライマックスが少し軽く感じられた。また、フォレスト・ウィテカー演じるズリの存在感が十分に活かされず、彼の死の場面も唐突で感情移入しにくかったのは残念だった。
それでも、この映画が単なるスーパーヒーロー映画以上の意味を持っていることは確かだ。カジノでの長回しのアクションシーンや、ティ・チャラが先祖の霊と対話する幻想的な場面など、映像的にも記憶に残る瞬間が多い。そして何より、ティ・チャラが最後に国連で「ワカンダは世界と手を取り合う」と宣言する姿は、孤立から共生へと舵を切る物語の結末として力強く響いた。
『ブラックパンサー』は、決して欠点のない作品ではない。だが、文化的な意義やキャラクターの葛藤、そして「正義とは何か」「力をどう使うべきか」のメッセージ性は、他のマーベル作品にはない深みを与えている。私にとってこの映画は、単なるヒーロー物語ではなく、悲しみや怒りを抱えながらも未来を選び取ろうとする人間たちの物語として心に残った。
物語の起承転結
起
ワカンダの王であった父ティ・チャカが亡くなり、息子ティ・チャラが新たに国王として即位する。 ワカンダは外界から隠された超文明国家であり、豊富なヴィブラニウム資源を持つが、長らく孤立を選んできた。ティ・チャラは王としての責務と、国をどう導くべきかに悩む。
承
ティ・チャラは、武器商人ユリシーズ・クロウを追う中で、謎の男エリック・キルモンガーと出会う。 実は彼はティ・チャラの従兄弟であり、幼少期に父をワカンダの王族に殺され、アメリカで孤独と差別の中で育った過去を持つ。 キルモンガーは「ワカンダの力を世界の抑圧された人々に解放するべきだ」と主張し、王位継承の儀式でティ・チャラに挑戦する。
転
キルモンガーはティ・チャラを打ち破り、王座を奪う。 彼はワカンダの技術を武器として世界中に送り出し、支配構造を覆そうとする。 一方、瀕死の状態から生き延びたティ・チャラは、仲間たちの助けを得て再び立ち上がる。 ワカンダは内戦状態となり、ティ・チャラとキルモンガーの最終決戦が繰り広げられる。
結
激闘の末、ティ・チャラはキルモンガーを倒す。しかし彼の思想や痛みを理解し、最後の瞬間を尊重して彼を癒そうとする。 キルモンガーは「奴隷にされるよりは死を選ぶ」と言い残し、夕日の下で息を引き取る。 ティ・チャラは彼の言葉を胸に刻み、ワカンダを世界に開き、国際社会と協力して未来を築くことを決意する。 物語は「孤立から共生へ」という変化を示して幕を閉じる。
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