映画『レヴェナント:蘇えりし者』感想とあらすじ

『レヴェナント』は、19世紀初頭のアメリカ西部を舞台にしたサバイバル復讐劇です。主人公はフロンティアの猟師ヒュー・グラス。仲間と共に毛皮狩りの遠征に出るが、先住民の襲撃や自然の脅威にさらされる。極寒の荒野を這いずりながら生き延び、裏切り者に復讐するために進むサバイバルの旅です。

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感想

まず頭に残ったのは「これは映画というより体験だった」という感覚。冒頭のアリカラ族による襲撃シーンは、観客を一瞬で混乱と恐怖の渦に放り込む。矢が飛び交い、銃声が響き、カメラは切れ目なく動き続けます。気づけば自分もその場に立ち尽くしているような没入感がありました。

そして、やはり忘れられないのは熊との死闘です。あの場面は「どうやって撮ったんだ」と思わず口にしてしまうほどのリアルさで、熊の唸り声や息遣い、毛並みの湿った質感まで伝わってくる。ディカプリオが地面に叩きつけられ、爪で引き裂かれ、息も絶え絶えに這いずる姿は、観ているこちらの呼吸まで浅くしてしまうほどでした。あの瞬間から、彼の生存は奇跡の連続であり、迫力満点。ただその奇跡を作られたものだとも感じることなく緊張感とスリル抜群です。

物語自体は単純です。息子を殺された父が、裏切り者フィッツジェラルドに復讐するために極寒の荒野を生き延びる。ただ、その「単純さ」を支えているのは、圧倒的な映像と音の力です。雪に覆われた森を横切る長回し、川面をなぞるように進むカメラ、そして風の音や焚き火の爆ぜる音。セリフが少ない分、自然そのものが語り手となり、物語に引き込んでいきます。

ディカプリオの演技は、言葉ではなく肉体で語るものでした。呻き声、荒い呼吸、凍りついた表情。ときに生肉を噛み、馬の死体を裂いてその中に潜り込む――その姿は「演技」というより「記録」に近い。彼がアカデミー賞を受賞したのも納得です。一方で、トム・ハーディ演じるフィッツジェラルドは、言葉の半分が聞き取れないほどの濁声でありながら、恐ろしく生々しい存在感を放っていました。彼の恐怖や憎悪の根源に、かつて頭皮を剥がされた過去があると知ったとき、単なる悪役ではなく「生き延びるために歪んだ人間」として見えてくるのも印象的でした。

ただし、この映画には矛盾や過剰さもあります。崖から馬ごと落ちても生き延び、氷河の川に流されても凍死しない。現実的に考えれば「不死身すぎる」と突っ込みたくなる場面も多い。それでも、私はその「あり得なさ」を超えて、自然の猛威と人間の執念がぶつかり合う映像詩として受け止めました。むしろ、最後にフィッツジェラルドを殺さず、川の流れに委ねるようにインディアンへ引き渡す場面に、この映画の本質がある気がします。復讐の物語でありながら、最終的に人間の意志を超えた「自然の摂理」に帰結していく。

『レヴェナント』は、二度と観たくないほど過酷で、同時に何度でも思い返してしまう映像体験でした。雪原の静寂、血の匂い、焚き火の温もり、そして人間の生への執念を存分に味わえた作品です。

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物語の起承転結

19世紀初頭、アメリカ西部。毛皮を求めて荒野を進む猟師たちの一団は、先住民アリカラ族の襲撃を受けて壊滅的な被害を受ける。生き残った者たちは必死に逃走するが、その途中で案内役のヒュー・グラスが巨大なグリズリーに襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。仲間たちは彼を担いで進もうとするが、追手や過酷な環境の中で足手まといとなり、結局グラスは息子ホークと数人の仲間に託される。

しかし、仲間の一人フィッツジェラルドは金欲と恐怖から、まだ息のあるグラスを見捨てようとし、さらに邪魔をするホークを目の前で殺害してしまう。若いブリッジャーを騙してその場を去り、グラスは雪原に置き去りにされる。 絶望的な状況の中、グラスは這いずりながらも生き延びる決意を固める。生肉を食らい、川に流され、馬の死体を切り裂いてその中に潜り込む――人間離れしたサバイバルの連続が始まる。

旅の途中で出会った先住民の男に助けられ、傷を癒やしながら進むグラス。しかしその男もフランス人の略奪者に殺され、グラスは再び孤独に戻る。やがて彼は偶然にもフランス人の野営地で、囚われていたアリカラ族の娘を救い出す。 一方、フィッツジェラルドは隊の金を奪って逃走。グラスは隊長と共に追跡するが、途中で隊長が殺され、ついにグラスとフィッツジェラルドの一騎打ちとなる。

雪原での死闘の末、グラスはフィッツジェラルドを追い詰める。しかし「復讐はお前を救わない」という言葉を思い出し、最後の一撃を加える代わりに、彼を川へ流し、待ち構えていたアリカラ族に引き渡す。フィッツジェラルドは彼らの手で殺され、グラスは血まみれのまま雪原に立ち尽くす。 ラスト、彼は亡き妻の幻影を見つめ、荒野の静寂の中に取り残される――復讐を果たしたはずなのに、救いのない余韻を残して物語は幕を閉じる。

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