『ワンダーウーマン』は、DCコミックスの人気ヒーローを主人公にした実写映画です。舞台は第一次世界大戦末期。人里離れた島・セミッシラでアマゾン族として育った王女ダイアナが、外の世界から迷い込んだパイロット、スティーブ・トレバーを助けたことをきっかけに、人類を戦争から救うため旅立つ物語です。
感想
彼女が演じるダイアナは、ただ美しいだけではなく、無垢さと強さを同時にまとった存在で、観ているこちらまで背筋を伸ばしたくなるような説得力やかっこよさがありました。
特に印象に残っているのは、第一次世界大戦の塹壕でスティーブが「ここは“ノー・マンズ・ランド”だ。誰も越えられない」と必死に止める場面です。ダイアナは迷わず梯子を登り、銃弾の雨を盾で受け止めながら前進していく。その瞬間、鳥肌が立ちました。あのシーンは単なるアクションではなく、「人間の限界を超えてでも正しいことを貫く」という彼女の信念そのものを映し出していたと思います。
また、スティーブとの関係も忘れがたい要素でした。ロンドンの街で彼女がコルセットを見て「どうして女性はこんなもので戦えるの?」と首をかしげたり、アイスクリームを食べて「あなたは誇るべきよ!」と無邪気に喜んだりする場面は、戦争映画の重苦しさを和らげるユーモアとして機能していました。二人の間に芽生える愛情は、作り物ではなく自然な流れで、だからこそスティーブが最後に犠牲になる瞬間、彼女の涙にこちらも胸を締めつけられました。
映像面でも強く心を打たれました。光に包まれたセミッシラの楽園的な美しさと、戦場の灰色と茶色に覆われたヨーロッパの対比は鮮烈で、まるで別世界を行き来しているようでした。特に冒頭のアマゾンたちが浜辺でドイツ兵と戦うシーンは、弓矢や剣を駆使した肉体的な迫力があり、CGに頼りすぎない生々しさが印象的でした。
もちろん欠点もあります。終盤のアレスとの戦いは、やや過剰なCGに頼りすぎていて、せっかく積み上げてきたリアリティが薄れてしまった印象がありますし、ドクター・ポイズンの動機が最後まで掘り下げられなかったのは惜しいところです。それでも、戦場で人間の醜さを目の当たりにしながらも「愛こそが世界を救う」と信じるダイアナの姿には、単なるヒーロー映画を超えた普遍的なメッセージが込められていたと思います。
物語の起承転結
起
人里離れた島・テミスキラで、アマゾン族の王女ダイアナは母ヒッポリタに守られながら育つ。幼い頃から戦士としての資質を示し、叔母アンティオペの指導のもと厳しい訓練を受ける。ある日、島の結界を破って第一次世界大戦中の飛行機が墜落。パイロットのスティーブ・トレバーを救ったことで、ダイアナは外の世界の戦争の存在を知る。彼女は「これは戦の神アレスの仕業だ」と信じ、アマゾンの使命として人類を救うため島を出る決意をする。
承
スティーブと共にロンドンへ渡ったダイアナは、男性中心の社会に戸惑いながらも、戦争を終わらせるために行動を開始する。スティーブの仲間たちと共に前線へ向かい、塹壕戦の泥沼に直面する。誰も突破できないとされた「ノー・マンズ・ランド」で、ダイアナは一人立ち上がり、銃弾を盾で受け止めながら進軍。彼女の勇気に兵士たちが続き、村を解放することに成功する。この場面で彼女は真のヒーローとしての姿を示す。
転
やがてドイツ軍の陰謀を操る存在がアレスだと確信したダイアナは、将軍ルーデンドルフを討ち取る。しかし戦争は終わらず、人間同士がなおも殺し合う姿を目の当たりにし、彼女は自らの信念を揺さぶられる。そこに現れたのは、実はアレスであった英国政府の高官サー・パトリック。彼は「人間は自らの欲望で戦う。私はただ真実を見せただけだ」と語り、ダイアナに人類への絶望を促す。激しい戦いの最中、スティーブは毒ガスを積んだ飛行機を自ら操縦して爆破し、命を落とす。別れ際に彼が「世界を救うのは君だ」と託した言葉が、ダイアナの心に深く刻まれる。
結
愛する人を失いながらも、ダイアナは「人間には愚かさもあるが、愛する力もある」と悟り、アレスを打ち倒す。戦争は終結し、彼女は人類の世界に残ることを選ぶ。最後に彼女は「愛こそが世界を救う」という信念を胸に、ワンダーウーマンとして歩み始める。
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