映画『プロメテウス』感想とあらすじ

『プロメテウス』はリドリー・スコット監督が『エイリアン』の世界観をベースに描いたSF映画です。舞台は2093年、人類の起源を探るために科学者たちが宇宙船プロメテウス号で惑星LV-223へ向かうところから始まります。そこで彼らは「エンジニア」と呼ばれる人類の創造主らしき存在の痕跡や、黒い液体による恐ろしい生命実験の跡を発見します。

映画は、人類はなぜ創られたのか、そしてなぜ滅ぼされようとしているのかという哲学的テーマを掲げつつ、未知の遺跡探索や感染、怪物の誕生といったホラー的要素も盛り込んでいます。

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感想

『プロメテウス』を観終えたとき、まず頭に残ったのは圧倒的な映像美だった。アイスランドで撮影された荒涼とした風景や、巨大なエンジニアの遺跡、船内の緻密な美術は、確かに目を奪う。没入感は格別で、冒頭の創世神話のようなシーン――白い巨人が滝の上で黒い液体を飲み、自らのDNAを分解して水に溶けていく――は詩的ですらあった。だが、その美しさに酔いしれる一方で、物語の展開やキャラクターの行動には何度も眉をひそめた。

最大の違和感は「科学者たちの愚かさ」だ。未知の惑星に降り立った直後、彼らは空気の成分を測定しただけでヘルメットを外す。感染症や未知の微生物の危険を考えないのかと呆れる。さらに、地質学者が地図を作る装置を操作していたのに迷子になり、死体を見てパニックになって逃げ出す。生物学者は蛇のようなエイリアンに出会い、恐怖するどころか手を伸ばして「おいで」と撫でようとし、あっさり犠牲になる。観客の方がよほど慎重だろうと思わせる場面の連続だ。

また、ショウ博士が自動手術装置で自ら帝王切開を行い、腹を切り開いて異形の胎児を取り出すシーンは、確かに強烈で忘れがたい。だが、その直後に腹部をホチキスのような器具で留めただけで走り回るのは、あまりに非現実的で失笑してしまった。こうした「見た目は派手だが科学的にも人間的にも説得力に欠ける」描写が多く、物語への没入を妨げる。

キャラクターの描写も薄い。イドリス・エルバ演じる船長はユーモラスだが、唐突に「これは兵器庫だ」と断言する場面は説明不足で、観客に「なぜ分かる?」と突っ込ませる。シャーリーズ・セロン演じるヴィッカーズは冷徹な企業人として登場するが、物語に大きな役割を果たさず、最後は転がる宇宙船に押し潰されるという滑稽な最期を迎える。ガイ・ピアースの老けメイクも不自然で、なぜ老人役に若い俳優を起用したのか理解に苦しむ。

一方で、マイケル・ファスベンダーのデイヴィッドは突出していた。『アラビアのロレンス』のピーター・オトゥールを真似る仕草、無表情の奥に潜む好奇心と冷酷さ。彼が黒い液体をホロウェイに飲ませる場面や、ショウに「なぜ知りたいのか」と問う場面は、唯一作品に知的な緊張感を与えていた。だがそのデイヴィッドの動機も曖昧で、観客に「なぜそんなことを?」と疑問を残す。

物語全体は「人類の起源を探る」という壮大なテーマを掲げながら、結局は「黒い液体が何でも起こす便利アイテム」として使われ、論理性を欠いた展開に終始する。虫にかければ蛇状の怪物に、人間にかければ病人に、性交を経て巨大イカに、そしてエンジニアに寄生してプレ・エイリアンに――と、まるで子供の落書きのような進化のレシピが展開される。

結末では、巨大なドーナツ型の宇宙船が地表に墜落し、転がりながらショウとヴィッカーズを追いかける。横に避ければいいだろうと思ったが、彼女たちは直線的に逃げ続け、結局押し潰される。まるでコメディのスケッチのようで、恐怖よりも失笑を誘った。

総じて、『プロメテウス』は映像的には目を見張るが、脚本の粗さとキャラクターの愚行が目立ち、観客を白けさせる場面が多い。「なぜそんな行動を?」という疑問ばかりが残る。それでも、デイヴィッドの存在感や、ショウの過酷な手術シーンなど、強烈に記憶に残る瞬間はある。私にとって『プロメテウス』は、壮大なビジュアルと哲学的テーマを掲げながらも、論理性と人間味を欠いた「美しいが空虚な映画」だった。

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物語の起承転結

21世紀末。考古学者エリザベス・ショウと恋人のホロウェイは、世界各地の古代遺跡に共通する「巨人と星図」の壁画を発見する。彼らはそれを「人類の創造主=エンジニア」からの招待状と解釈し、大企業ウェイランド社の支援を受けて宇宙船プロメテウス号で惑星LV-223へ向かう。船には冷徹な監督役ヴィッカーズ、アンドロイドのデイヴィッド、そして科学者や乗組員たちが乗り込んでいた。

到着した惑星で彼らは巨大な遺跡を発見。内部にはエンジニアの死体や謎の壺が並んでおり、黒い液体が漏れ出していた。デイヴィッドは密かに壺を調べ、ホロウェイに液体を飲ませる。ホロウェイは感染し、ショウを妊娠させてしまう。彼女は自動手術装置で自ら腹を切り裂き、異形の胎児を摘出するという衝撃的な体験をする。

一方、地質学者や生物学者は遺跡で迷子になり、蛇のようなクリーチャーに襲われて死亡。感染したホロウェイも変異し、仲間に焼き殺される。船内は混乱に陥り、次々と犠牲者が出ていく。

実はウェイランド社の創業者ピーター・ウェイランド本人が密かに船に乗っており、「創造主に会って寿命を延ばしてもらう」ことが真の目的だった。彼らは眠っていたエンジニアを蘇生させるが、エンジニアは人類に敵意を示し、ウェイランドを殺害。さらに宇宙船を発進させ、地球を滅ぼすために黒い液体を運ぼうとする。

船長ジャネックと乗組員は人類を守るため、プロメテウス号ごと体当たりしてエンジニアの船を墜落させる。

墜落から生き延びたショウは、かつて自ら摘出した異形の胎児が巨大な怪物に成長しているのを目撃する。その怪物は最後のエンジニアを襲い、胸を突き破って「原始的なゼノモーフ」に似た存在を生み出す。

ショウは破壊されたデイヴィッドの頭部と共に、真実を求めてエンジニアの母星へ旅立つ決意をする。「なぜ私たちを創り、なぜ滅ぼそうとしたのか」――その答えを求めて。

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