映画『ロラックスおじさんの秘密の種』感想とあらすじ

『ロラックスおじさんの秘密の種』は、ドクター・スースの絵本を原作にしたアニメーション映画です。

舞台はすべてが人工物でできた街「スニードビル」。草も木もなく、人々は缶詰の空気を買って暮らしています。主人公の少年テッドは、憧れの女の子オードリーに「本物の木が見たい」と言われ、その願いを叶えるために街の外へ出て、かつて森を破壊してしまった男ワンスラーから真実を聞き出します。そこで登場するのが、森の守護者ロラックス。彼は「木々の代弁者」として、自然を守る大切さを訴えます。

要するに、「自然を守ることの大切さ」をポップで明るい映像と音楽で伝える環境寓話アニメ、というのがこの映画の特徴です。

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感想

『ロラックスおじさんの秘密の種』を観終えてまず感じたのは、映像の鮮やかさと物語のテーマの重さの落差だった。冒頭、プラスチックでできた街スニードビルの光景は、人工的な芝生やディスコ機能付きの電気仕掛けの木々が並び、まるでテーマパークのようにきらびやかだが、同時にどこか不気味で息苦しい。空気すら缶詰で売られているという設定は笑えるほど極端で、しかし現実の消費社会を思い出させて苦くなる。

物語の軸は二つに分かれている。一つは、少年テッドが憧れの少女オードリーに本物の木を贈ろうと奮闘する現代パート。もう一つは、かつて森を切り開き「スニード」を売り出したワンスラーの回想だ。正直に言えば、テッドのパートは恋心を動機にしている分、軽く感じられた。オードリーの「本物の木が見たい」という台詞は美しいが、それを叶えるために壁を壊して人々に真実を見せるクライマックスは、あまりに予定調和で、説得力よりも安易さが勝ってしまう。

一方で、ワンスラーの物語にはまだ重みが残っていた。若き日の彼がトゥルフラの森に足を踏み入れ、綿菓子のような木の冠を刈り取って最初の「スニード」を編み上げる場面は、色彩の鮮やかさと同時に背筋が冷える。そこに現れるロラックスが「私は木の代弁者だ」と低い声で警告する瞬間、この物語がただのファンタジーではなく、環境破壊の寓話であることを思い出す。だが映画はその緊張を長く保てない。

それでも、細部には心を動かされる瞬間がある。木が一本一本倒れるたびに、熊たちが食べ物を失って森を去る姿や、スワミースワンが歌をやめて飛び去る姿は、子ども向けの可愛らしいデザインでありながら、確かな喪失感を残す。ラストでワンスラーがテッドに最後の種を託す場面も、胸を締めつけた。

ただ、全体を通してみると、この映画は「環境を守ろう」という強いメッセージを、カラフルな映像と軽快な歌で包み込み、観客にとって飲み込みやすい形にした作品だと思う。木を切り倒す音に心を痛めるよりも、歌やギャグに気を取られてしまう。ロラックス自身も、守護者というよりは小言を言うマスコットのように扱われ、存在感が希薄だったのは残念だ。

結局、『ロラックス』は子どもたちにとっては楽しく、色鮮やかで、歌って笑える映画だろう。しかし大人として観ると、環境破壊の寓話が「ハッピーエンドの冒険物語」に変換されてしまったことに物足りなさを覚える。

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物語の起承転結

舞台はすべてが人工物でできた街スニードビル。草も木も存在せず、人々は缶詰の空気を買って暮らしている。少年テッドは、憧れの少女オードリーに「本物の木を見たい」という夢を語られ、彼女の心をつかむために木を探す決意をする。祖母ノーマの助言で、街の外れに住む謎の老人ワンスラーを訪ねることになる。

ワンスラーはかつての自分の過去を語り始める。若き日の彼は「スニード」という万能商品を作るため、綿菓子のような冠を持つトゥルフラの木を切り倒した。最初の一本を倒したとき、森の守護者ロラックスが現れ、「木々と動物たちのためにやめろ」と警告する。しかしスニードが大ヒットすると、ワンスラーは家族や欲望に押され、次々と木を伐採していく。森のバーバルートやスワミースワン、ハミングフィッシュたちは住処を失い、やがて森は荒廃してしまう。

ワンスラーの語りを聞いたテッドは、彼から最後に残された「トゥルフラの種」を託される。しかし街では空気を独占販売する悪徳実業家オヘアが、木が復活すれば商売が成り立たなくなると妨害に動く。テッドは祖母や仲間の助けを借り、街の人々の前で壁を壊し、外の荒れ果てた大地を見せる。人々は初めて自分たちが閉じ込められていたことに気づき、オヘアの支配は崩れていく。

テッドは街の中央に最後の種を植える。人々は歌いながら「Let It Grow」と声を合わせ、自然を取り戻そうとする希望に包まれる。かつて絶望の中にいたワンスラーのもとにもロラックスが再び現れ、彼に赦しのまなざしを向ける。物語は「Unless someone like you cares a whole awful lot, nothing is going to get better. It’s not.(誰かが心から気にかけなければ、何も良くはならない)」という言葉で締めくくられる。

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