映画『LIFE!/ライフ』感想とあらすじ

主人公ウォルター・ミティは、LIFE誌のネガ管理部門で働く、どこにでもいそうな冴えない中年男性だ。彼は日常の中でしばしば空想に没頭し、ヒーローのように活躍する自分を夢見る。しかし現実の彼は、同僚からも存在感を持たれず、恋心を抱くシェリルにすら声をかけられない。そんな彼が、雑誌の最終号を飾るはずの「25番目のネガ」を紛失したことから、思いがけず現実の冒険へと踏み出していく。

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感想

特に心を打たれたのは、グリーンランドの酒場でのシーンだ。酔っ払いのパイロットに乗せてもらうかどうか迷うウォルターの背中を押すのは、シェリルが歌うデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」だ。彼女の声が空想の中から現実へと重なり、ウォルターはついにヘリに飛び乗る。あの瞬間、彼の空想と現実が交差する。そのおしゃれで彼の独特な魅力やこの作品の良さが出ている気がした。

また、アイスランドの荒野をスケートボードで疾走する場面は、ただの映像美を超えて、彼の内面の解放を象徴していた。火山の噴煙を背に、風を切って走る姿は、これまでの冴えない男のイメージを完全に覆し、かっこよく写った。

一方で、映画は単なる冒険譚にとどまらない。ヒマラヤでついに伝説的写真家ショーン・オコンネルと出会うシーンは穏やかな空気に包まれ、むしろ派手さを排した時間の流れが印象的だった。雪山でサッカーをする子どもたちを眺めながら、ショーンが「美しいものは注目を求めない」と語る場面は、この映画全体のテーマを凝縮しているように思えた。結局、最後のネガに写っていたのは、雑誌を支えてきたウォルター自身の姿だった。彼がずっと「何者でもない」と思い込んでいた自分こそが、実は最も尊い存在だったのだ。

もちろん、映画には突拍子もない展開もある。サメとの格闘や、ヒマラヤでの携帯電話の通話など、現実離れした描写に首をかしげる瞬間もあった。しかし、それらの「あり得なさ」すらも、ウォルターの空想と現実の境界を曖昧にし、観客に「これは夢か、それとも現実か」と問いかける仕掛けのように感じられた。

映像と音楽の力も忘れがたい。アイスランドやグリーンランド、ヒマラヤの風景はまるで絵葉書のように美しく、José Gonzálezの「Step Out」や「Stay Alive」、そして「Dirty Paws」などの楽曲は、ウォルターの心の変化をそのまま音にしたかのように響いた。特に「Major Tom」のシーンは、彼の人生の転換点を象徴する名場面だと思う。

『LIFE!』は、派手なヒーロー映画でもなく、完璧に整った脚本の映画でもない。だが、だからこそ、観る者の心に直接届く。私はこの映画を観て、自分の中の「まだ見ぬ風景」に会いに行きたくなった。そして何より、ウォルターが最後に自分自身を肯定するように、自分の人生を生きていいと思えた。

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物語の起承転結

ウォルター・ミティは、LIFE誌のネガ管理部門で働く地味な中年男性。日常では存在感が薄く、恋心を抱く同僚シェリルにすら声をかけられない。彼の唯一の逃避先は、突如として訪れる空想の世界。そこでは彼はヒーローであり、冒険家であり、誰からも尊敬される存在だ。しかし現実の彼は、会社がオンライン化に伴い縮小される中で、自分の居場所を失いかけていた。そんな折、雑誌の最終号を飾るはずの「25番目のネガ」が見当たらないことが発覚する。

ウォルターは伝説的カメラマン、ショーン・オコンネルから送られたそのネガを探すため、ついに現実の旅に出る。グリーンランドの酒場で酔っ払いパイロットのヘリに飛び乗るシーンでは、シェリルが歌う「Space Oddity」が彼の背中を押す。さらにアイスランドでは火山の噴煙を背にスケートボードで疾走し、これまでの冴えない自分を脱ぎ捨てるように冒険を重ねていく。空想の中でしか生きられなかった彼が、現実の中で少しずつ「生きている実感」を得ていくのだ。

旅の果てに、ウォルターはヒマラヤでショーン本人と出会う。雪山でサッカーをする子どもたちを眺めながら、ショーンは「美しいものは注目を求めない」と語る。そしてついに「25番目のネガ」の正体が明かされる。それは壮大な自然でも、戦場の一瞬でもなく、LIFE誌を支えてきたウォルター自身の姿だった。自分を「何者でもない」と思い込んでいた彼が、実は最も尊い存在として写し取られていたのだ。

帰国したウォルターは、会社を去ることになるが、もう以前のように卑屈な自分ではない。シェリルとも素直に心を通わせ、最後に街角でLIFE誌の最終号を手に取る。表紙には、自分が写った「25番目のネガ」が堂々と掲載されていた。ウォルターは静かに微笑み、自分自身を肯定する。彼の「秘密の生活」は、もはや空想の中ではなく、現実の人生そのものへと変わっていた。

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