映画『ナイト&デイ』感想とあらすじ

『ナイト&デイ』は、トム・クルーズとキャメロン・ディアスが主演するアクション・コメディ映画です。

物語は、平凡な女性ジューンが空港で偶然出会った謎の男ロイと同じ飛行機に乗り合わせるところから始まります。ところが彼は実はCIAの元エージェントで、裏切り者に追われる身。ジューンは否応なく銃撃戦やカーチェイスに巻き込まれ、世界中を飛び回る大冒険に引きずり込まれていきます。

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感想

『ナイト&デイ』を観てまず強く印象に残ったのは、冒頭の飛行機のシーンだった。ほとんど乗客がいない不自然なフライトで、キャメロン・ディアス演じるジューンが化粧室で身だしなみを整えている間に、トム・クルーズ演じるロイが一人で乗客全員を相手に壮絶な格闘を繰り広げる。ジューンが何も知らずに鏡の前で髪を整えている裏で、機内は死闘の場と化しているというギャップが、作品全体のトーンを象徴しているように思えた。荒唐無稽でありながら、どこか笑ってしまう。ここで「これはリアルなスパイ映画ではなく、笑いとスリルを同時に楽しむ作品なんだ」と観客に宣言しているようだった。

物語が進むにつれて、ロイが本当に正義の味方なのか、それとも危険な裏切り者なのか、観客もジューンと同じように疑い続けることになる。FBIを名乗る者たちに連行されそうになるジューンを、ロイが颯爽と現れて救い出す場面は、あり得ないほど派手で、同時に妙に爽快だった。特に、ジューンの車の上にロイが突然飛び降りてきて、銃撃戦の最中にも落ち着いた口調で話しかけるシーンは、「これぞ映画の楽しさだ」と思わせる瞬間だった。

スペインの「牛追い祭り」でのバイクチェイスも忘れがたい。暴走する牛の群れの中を、ロイとジューンが二人乗りで疾走する。ジューンがロイの背中にしがみつきながらも、時に彼の膝の上で銃を撃つ姿は、現実的にはあり得ないが、観ているこちらは笑いながら手に汗を握ってしまう。こうした「あり得なさ」を徹底的に突き詰めて映像化している点に、この映画の魅力があると感じた。

一方で、ジューンが何度も薬で眠らされ、気づけば別の国にいるという展開には、正直なところ不快感も覚えた。本人の意思を無視して連れ回すことを「ロマンチック」として描くのは、今の視点から見ると危うさを感じる。ただ、その「目覚めたら別の場所にいる」という演出が、観客にとっても「どうやってここまで逃げ切ったのか」を想像させる仕掛けになっているのも事実で、娯楽映画としてのテンポを優先した結果なのだろう。なので、物語を厳密に評価する視聴者にとっては矛盾を感じるかもしれない。

全体を通して一番楽しめたのは、やはりクルーズとディアスの掛け合いだった。ロイの超人的な行動に振り回されながらも、次第にジューンが逞しくなっていく過程は、ただの「巻き込まれヒロイン」ではなく、相棒として成長していく物語にも見えた。特に、真実の血清を打たれたジューンが、敵に向かってどうでもいいことばかり喋り続ける場面は、緊張感の中にユーモアが差し込まれていて、思わず声を出して笑ってしまった。

『ナイト&デイ』は、筋立てや設定を真剣に考えれば考えるほど穴だらけで、リアリティを求める人には到底受け入れられない映画だと思う。しかし、私はむしろその「ご都合主義」を楽しむことができた。飛行機の墜落、ハイウェイでの銃撃戦、アルプスの列車での格闘、そしてスペインの祭りと、次から次へと舞台が変わり、観客に考える暇を与えない。まるで「頭を空っぽにして楽しめ」と言われているようで、その潔さが心地よかった。

結局のところ、この映画は「トム・クルーズとキャメロン・ディアスが全力で遊んでいる姿を観る」こと自体が最大の魅力なのだと思う。二人の笑顔や掛け合いがあれば、多少のご都合主義や荒唐無稽さは気にならない。

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物語の起承転結

飛行機に乗ろうとするジューン(キャメロン・ディアス)は、空港で偶然ロイ(トム・クルーズ)と出会う。彼は謎めいた雰囲気を漂わせる男で、ジューンは軽いときめきを覚える。しかし、離陸した飛行機の中で突如ロイが乗客や乗員を相手に壮絶な戦闘を繰り広げ、ジューンは事態を理解できないまま墜落寸前の飛行機から生還する。ここで彼女は「この男は一体何者なのか」という疑念と恐怖に包まれる。

ロイはCIAの元エージェントで、仲間に裏切られ、今は追われる身だと語る。彼が守ろうとしているのは「ゼファー」と呼ばれる永久エネルギーを生み出すバッテリーで、これを巡ってCIA内部の裏切り者や武器商人が暗躍している。ジューンはFBIを名乗る者たちに保護されそうになるが、ロイは「彼らは信用できない」と警告し、派手な銃撃戦で彼女を救い出す。ジューンは混乱しながらも、次第にロイの言葉を信じざるを得なくなる。

二人はスペインの「牛追い祭り」でのバイクチェイスや、アルプスを走る列車での戦闘など、世界各地を転々としながら命を狙われ続ける。ジューンは最初はただの巻き込まれた一般人だったが、次第にロイに助けられるだけでなく、自らも危機を切り抜ける力を身につけていく。やがて、ロイが裏切り者に仕立て上げられていたこと、真の黒幕はCIAのフィッツジェラルド(ピーター・サースガード)であることが明らかになる。ジューンはロイを信じる決意を固め、共に戦うパートナーへと変わっていく。

最終的に、ロイとジューンはフィッツジェラルドを倒し、ゼファーを守り抜くことに成功する。ジューンは冒険の中でロイへの信頼を愛情へと変え、ロイもまた彼女をただの「巻き込まれた人間」ではなく、かけがえのない存在として受け入れる。最後は、数々の死闘を経た二人が穏やかな時間を取り戻し、観客に「これはスパイ映画でありながら、ロマンティック・コメディでもある」という余韻を残して幕を閉じる。

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