映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』感想とあらすじ

『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』は、同名の人気アクションゲームをもとにしたディズニー製作の冒険ファンタジー映画です。

舞台は古代ペルシャ。孤児から王に拾われて育った青年ダスタンが、偶然手にした「時間を巻き戻す力」を秘めた短剣をめぐって、王女タミーナと共に陰謀に立ち向かう物語です。

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感想

『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』を観終えてまず思ったのは、典型的なハリウッドの娯楽大作だと感じた。冒頭、王に拾われた孤児ダスタンが市場で軽やかに屋根を飛び移るシーンは、まさにゲームのパルクールを実写に落とし込んだ瞬間で、観客を一気に物語の世界へ引き込む。矢を壁に突き立てて足場にしながら駆け上がる場面などは、ゲームを知る者なら思わずニヤリとするだろうし、知らない者でも単純に胸が高鳴る。

物語の中心にあるのは、時間を巻き戻す力を秘めた「砂の短剣」。ダスタンが初めてその力を使い、ほんの数秒前の失敗をやり直すシーンは、映像としては派手ではないが、時間が巻き戻る砂の流れと彼の驚きの表情が重なり、観客に「もし自分がこの力を持ったら」と想像させる力を持っていた。だが一方で、物語後半になるとこの短剣の説明が繰り返されすぎて、冗長と感じさせてしまうのも事実だ。

キャラクターで印象に残ったのは、やはりアルフレッド・モリーナ演じるシーク・アマルだ。彼が砂漠でダチョウを使ったレースを仕切りながら「税金なんて大嫌いだ!」と毒づく場面は、重厚な冒険物語の中に軽妙な笑いを差し込む絶妙なアクセントになっていた。逆に、ベン・キングズレーの悪役ニザムは演技自体は堂々としているものの、動機や存在感がやや薄く、ディズニー作品にありがちな「わかりやすい悪役」に留まってしまった印象がある。

映像面では、砂漠の都市アラムートの壮大なセットや、夕陽に照らされた城壁のシルエットが美しかった。ただし、蛇を操る暗殺者や過剰なスローモーション演出は、時に緊張感を削いでしまい、せっかくの実写アクションの迫力を弱めていたように思う。特に、ダスタンとタミーナが幾度も「今にもキスしそうでしない」場面を繰り返すのは、観ていて少し気恥ずかしく、もう少し自然な関係性の描き方が欲しかった。

それでも、ジェイク・ギレンホールの肉体的な説得力と、ジマ・アータートンの毅然とした美しさが画面を支えていたのは確かだ。二人が砂嵐の中を必死に駆け抜け、短剣を巡って言い争いながらも次第に信頼を築いていく姿には、王道的なロマンスの魅力があった。特に終盤、世界の崩壊を目前にしてダスタンが短剣を使い、すべてを巻き戻すクライマックスは、理屈よりも「時間を超えて愛と正義を貫く」という寓話的な力強さを感じさせた。

総じて『プリンス・オブ・ペルシャ』は、歴史的正確さや深い人物描写を求める映画ではない。むしろ、「次はどんなアクションが飛び出すのか」とワクワクしながら観るべき作品だ。

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物語の起承転結

ペルシャの王に拾われた孤児ダスタンは、王の三男として育てられる。彼は生まれながらの王子ではないが、勇敢さと機転で兄たちと肩を並べる存在となっていた。物語は、ペルシャ軍が「武器を密造している」との疑いをかけられた聖都アラムートを攻める場面から始まる。戦いの中でダスタンは、神秘的な短剣を手に入れる。これが後に運命を大きく変える「時間の砂」の力を秘めた短剣だった。

勝利の宴の最中、王が暗殺され、濡れ衣を着せられたダスタンは命を狙われる立場に追い込まれる。彼はアラムートの王女タミーナと共に逃亡の旅に出る。互いに反発しながらも、短剣の秘密を共有するうちに少しずつ信頼を築いていく。短剣は握る者だけが時間を巻き戻せる力を持ち、戦いの中でダスタンはその力を何度も目の当たりにする。だが同時に、王の死の背後に陰謀があることを知り、真相を探ろうとする。

陰謀の黒幕は、王の弟ニザムだった。彼は「砂の神殿」に眠る膨大な砂を解き放ち、世界を滅ぼしてでも自らの過去をやり直そうと企んでいた。ダスタンとタミーナは幾度も暗殺者や罠をかいくぐり、ついに神殿の奥深くでニザムと対峙する。激しい戦いの末、ダスタンは短剣を使い、世界が崩壊する寸前に時間を巻き戻す。すべてが「アラムート侵攻の直後」まで戻り、王はまだ生きており、陰謀も未然に防がれる。

時間が巻き戻ったことで、誰も死んでいない世界に戻ったダスタンは、兄たちに真実を告げ、ニザムの裏切りを暴く。タミーナとの旅の記憶は彼だけのものとなったが、彼女に短剣を返す場面には、確かに二人が共有した絆の余韻が漂っている。物語は、失われたはずの悲劇をやり直し、未来を選び直すことができた「もう一つの可能性」として幕を閉じる。

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