『テッド』は、子どもの頃に「テディベアが本物の友達になりますように」と願った少年ジョンの夢が奇跡的に叶い、成長してもずっと一緒に暮らしている“しゃべるクマ”との日常を描いたコメディ映画です。
ただし、そのクマ=テッドは可愛い見た目とは裏腹に、酒・ドラッグ・下ネタ大好きのダメ親友。大人になったジョン(マーク・ウォールバーグ)は恋人ロリー(ミラ・クニス)との結婚を考える年齢になっても、テッドとつるんでばかりで成長できない。物語は「子ども心を捨てきれない男が、友情と恋愛の間でどう折り合いをつけるか」を、下品でバカバカしいギャグと共に描いていきます。
感想
映画『テッド』を観てまず強烈に残ったのは、あの“ぬいぐるみが動き出す”という突拍子もない設定が、単なるギャグにとどまらず、実際にスクリーンの中でリアルに息づいていたことだ。冒頭、孤独な少年ジョンがクリスマスに「テディベアが本物の友達になりますように」と願い、奇跡的に叶ってしまうシーンは、まるで子ども時代の夢がそのまま映像化されたようで胸が躍った。しかもその後、テッドが一夜にして全米の人気者になり、テレビ番組に出演している姿は、現実とファンタジーの境界が一気に崩れる瞬間で、思わず笑ってしまった。
だが物語が進むにつれて、テッドはただの“奇跡の存在”ではなく、下品でだらしない、酒とドラッグに溺れる“悪友”として描かれていく。ジョンと一緒にソファでマリファナを吸いながら『フラッシュ・ゴードン』を熱狂的に語る場面などは、くだらないのに妙にリアルで、観ているこちらまで学生時代の友人との無駄話を思い出してしまった。特にサム・J・ジョーンズ本人が登場し、二人と一緒に大騒ぎするシーンは、バカバカしさの極みでありながら、80年代カルチャーへの愛情が詰まっていて最高だった。
一方で、ジョンの恋人ロリーとの関係は、予想通りの展開ながらも印象的だ。レストランでの会話や、ジョンが仕事に遅刻してロリーを失望させる場面など、何度も繰り返される衝突は「大人になりきれない男」の典型を見せつける。特にホテルでジョンとテッドが取っ組み合いの大喧嘩をするシーンは、CGと実写の融合が見事で、笑いながらも「この二人の関係は本当に子どもじみた依存関係なんだ」と痛感させられた。
ただ、映画全体を振り返ると、笑いの質にはムラがある。爆笑できる瞬間もあれば、寒いジョークもあった。まぁコメディ映画の中でも、かなりフランクで気軽に見れる感じ。テッドの声が『ファミリー・ガイ』のピーター・グリフィンそのままなのも、人によっては気になって仕方がないだろう。私自身も最初は違和感が強かったが、次第に「この下品なクマにはこの声しかない」と思えてきた。
終盤、テッドが誘拐され、命を落としかける展開は、正直やや取ってつけたように感じたが、それでもジョンとロリー、そしてテッドの関係が一度壊れ、再び修復される流れには不思議と感情を揺さぶられた。特に「テッドが死んでしまったのでは」と思わせてからの復活は、ベタだと分かっていても胸をなでおろした自分がいた。
総じて『テッド』は、下品でくだらないジョークに満ちたコメディでありながら、友情や成長という普遍的なテーマをしっかり抱えている。ジョンが“子どもの心を捨てきれない大人”として描かれる一方で、観客もまた「くだらないことで笑える自分」を再発見させられる。テッドというキャラクターは、ただのCGのぬいぐるみではなく、観る者の中に眠る幼さや無責任さを映し出す存在だった。
笑いの質にばらつきはあるし、ストーリーも予想の範囲を出ない。しかし、ソファでビール片手にテッドとジョンがバカ騒ぎする姿を見ていると、「映画って理屈抜きで楽しめばいいんだ」と思わせてくれる。結局のところ、この作品は“くだらなさ”を全力で肯定する映画であり、その潔さこそが最大の魅力だと感じた。
物語の起承転結
起
孤独な少年ジョンは、クリスマスの夜に「自分のテディベアが本物の友達になりますように」と願う。その願いは奇跡的に叶い、ぬいぐるみのテッドが命を持ち、二人は親友として成長していく。幼少期には全米の人気者となったテッドも、時が経つにつれただの下品でだらしない“悪友”に落ち着き、35歳になったジョンはいまだに彼と一緒に酒やドラッグに溺れる日々を送っていた。
承
ジョンには4年間付き合っている恋人ロリーがいるが、彼女は「そろそろ結婚を考えたい」と思っているのに、ジョンはテッドとつるむばかりで成長しない。レストランでの会話や仕事への遅刻など、日常の中で次第に不満が募り、ついにロリーは「テッドと距離を置くか、私と別れるか」と迫る。ジョンは渋々テッドに一人暮らしを始めさせるが、結局はまた一緒に遊んでしまい、ロリーとの関係は悪化していく。
転
そんな中、テッドは異常な執着を見せる男ドニーに誘拐されてしまう。ジョンはロリーと協力してテッドを救出しようとするが、逃走の最中にテッドは破かれ、命を落としたかのように動かなくなってしまう。ジョンは深い喪失感に打ちひしがれ、ようやく自分が大人として何を大切にすべきかを痛感する。
結
しかし翌朝、ロリーの願いによってテッドは奇跡的に復活する。ジョンはロリーとの関係を修復し、テッドも二人の生活に新しい形で溶け込んでいく。物語は、下品でくだらない笑いに満ちつつも、「友情と成長」「子ども心と大人になること」の両立を描きながら幕を閉じる。
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