映画『アメリ』感想とあらすじ

『アメリ』は、観る人を不思議な夢の世界へと誘う映画でした。

物語はとてもシンプルで、孤独に育ったアメリが「人を幸せにする」という小さな使命を見つけ、周囲の人々にささやかな喜びを届けていくというものです。しかし、その語り口や映像表現は決して単純ではなく、色彩や音楽、カメラワークが織りなす独特の世界観が、観客をまるでおとぎ話の中にいるような気持ちにさせます。

アメリの行動は時に優しく、時に少し意地悪で、子どものような無邪気さと大人の孤独が同居しています。彼女が匿名で人助けを続ける姿は微笑ましい一方で、「自分自身の幸せをどう見つけるのか」という問いを突きつけてもくる。特に、盲目の老人を導く場面や、父親を旅に送り出すために庭の小人を世界旅行させるエピソードは、ユーモラスでありながら胸を打つものでした。

映像は赤や緑を基調とした鮮やかな色彩で統一され、音楽はアコーディオンを中心とした旋律が軽やかに流れ、映画全体を「夢の中のパリ」として描き出しています。主演のオドレイ・トトゥは、アメリというキャラクターそのものを体現しており、彼女の大きな瞳といたずらっぽい笑顔は、観客を物語に引き込む大きな力となっていました。

この映画は単なる「癒し系のラブストーリー」ではなく、孤独や不安を抱えながらも、他者とのつながりを通じて自分自身を見つけていく物語です。観終わった後には、日常の小さな出来事やささやかな幸せを大切にしたくなるような、そんな余韻を残してくれました。

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物語の起承転結

 幼少期に母を事故で亡くし、父からも十分な愛情を受けられなかったアメリは、内向的で空想好きな大人へと成長する。モンマルトルのカフェで働きながら孤独な日々を送っていた。

 ある日、部屋の壁の中から子どもの宝物箱を見つけ、それを持ち主に返すことで人を幸せにできると気づく。以後、匿名で周囲の人々を助けることに喜びを見出し、父親や隣人、同僚などに小さな奇跡を起こしていく。

 しかし、自分自身の幸せには臆病で、恋心を抱いた青年ニノに対してはなかなか素直になれない。匿名のまま人を助け続けるだけでは、自分は孤独のままではないかという葛藤に直面する。

 勇気を出してニノに想いを伝え、二人は結ばれる。アメリは「他者を幸せにすること」と「自分自身の幸せを受け入れること」の両方を手に入れ、物語は温かい余韻を残して幕を閉じる。

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