映画『シティ・オブ・ゴッド』感想とあらすじ

『シティ・オブ・ゴッド』は、リオ・デ・ジャネイロ郊外のスラムを舞台に、貧困と暴力に支配された社会の現実を描いた衝撃的な作品である。物語は写真家を夢見る少年ロケットの視点から語られ、彼の成長とともに、スラムの歴史や人々の運命が浮かび上がる。

映画は1960年代から80年代にかけての数十年を描き、子どもたちが銃を手にし、麻薬と暴力の世界に取り込まれていく様子を容赦なく映し出す。特に幼い子どもが殺しを強要される場面などは、強烈な衝撃を与えられた。だが同時に、ロケットの写真への情熱や、友情や恋愛の一瞬の輝きが、絶望の中にわずかな希望を感じる。

演出は非常にシンプルかつ見やすく、時系列を飛び越える編集やフリーズフレーム、章立てのような構成が印象的だ。ブラジル独自のリズムや音楽が作品に独自の色を与えている。出演者の多くは実際のスラム出身の素人俳優であり、そのリアリティが作品をさらに生々しくしている。

この映画は単なるギャング映画ではなく、社会の構造的な問題を突きつける作品である。暴力の連鎖から抜け出すことの難しさ、選択肢の乏しさ、そして「生き延びること」そのものが奇跡であるという現実を描き出している。観る者にとって決して心地よい体験ではないが、だからこそ忘れがたい。『シティ・オブ・ゴッド』は、映画としての完成度と社会的メッセージを兼ね備えた傑作である。この映画は単なる犯罪映画ではなく、ラテン的な生命力や「鈍感力」、そして友情の力を描き出している。極限の環境にあっても人々は踊り、笑い、友情を育む強さと同時に脆さを垣間見れた。

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物語の起承転結

1960年代、リオ郊外に新しく作られたスラム「シティ・オブ・ゴッド」に貧しい人々が移住する。少年ロケットは兄が属する「テンダー・トリオ」という小さな盗賊団を通じて犯罪の世界を垣間見る。一方、幼いリル・ダイス(後のリル・ゼ)は初めての大量殺人を犯し、暴力の道を歩み始める。

1970年代、リル・ゼは麻薬取引を牛耳り、恐怖でスラムを支配する存在となる。彼の親友ベニーは「クールな不良」として慕われるが、やがて抗争の中で命を落とす。ロケットは犯罪に関わることを避けつつ、写真への情熱を育てていく。

リル・ゼの暴虐に対抗する形で「ノックアウト・ネッド」が立ち上がり、スラムは全面戦争に突入する。子どもたちまでもが「ランツ(小さな兵士)」として銃を手にし、暴力は世代を超えて拡大していく。ロケットは戦場のような日常を写真に収め、やがて新聞社に注目される。

抗争の果てにリル・ゼは警察に捕らえられるが、直後に子どもギャングたちに殺される。暴力の連鎖は終わらず、次の世代へと引き継がれていく。ロケットは自らの写真が新聞に掲載されることで、スラムから抜け出すきっかけを得る。だが「シティ・オブ・ゴッド」そのものは変わらず、暴力と貧困の循環が続いていく。

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